マレーシアで会社を作ろうと調べ始めると、まず出てくるのが「Sdn Bhd」という言葉です。
読み方は「センディリアン・ブルハッド」。正式には Sendirian Berhad で、日本でいう株式会社(非公開会社)に相当する法人形態です。マレーシアで事業を行う日本人・日本企業が設立するのは、ほぼこの形態です。
私も2025年にこのSdn Bhdを設立しました。この記事では、Sdn Bhdとはどういう法人なのか、設立の流れ、必要書類、費用を、実際に通った経験を交えて整理します。
⚠️ 前提
会社法の要件・費用相場は改定されます。この記事は2026年7月時点で調べた内容と、2025年に設立した私自身の経験に基づく個人的な記録です。実際の手続きは公式情報(SSM/CCM)および有資格の専門家にご確認ください。
1. Sdn Bhdの基本
Sdn Bhdの主な特徴は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人格 | 株式有限責任会社(非公開会社) |
| 外資比率 | 100%外資での設立が可能(※業種により制限あり) |
| 法律上の最低資本金 | RM1 |
| 取締役 | 最低1名(うち法定数はマレーシア居住者) |
| 株主 | 最低1名(居住要件なし) |
| 会社秘書役 | 必須(設立後30日以内に任命) |
| 登記先 | SSM/CCM(マレーシア企業委員会) |
ポイントは2つあります。
① 法律上はRM1で作れる「最低資本金RM1」と聞くと驚くかもしれませんが、これは事実です。ただし後述するとおり、ビザや許認可を取るなら、この金額では足りません。ここが最大の注意点です。
② 100%外資が可能だが、業種による制限がある銀行・保険・通信など規制業種は外資制限や特別ライセンスが必要です。また卸売・小売・貿易系は外資比率が高いとWRTライセンスが必要になり、資本金要件も上がります。
2. 設立の流れ(6ステップ)
実務の流れは、おおむね次のようになります。
ステップ1:会社秘書役(カンパニーセクレタリー)を決める実務上、ここが起点になります。会社秘書役は資格を持つ専門家である必要があり、設立手続きも通常この秘書役を通して進めます。設立を代行会社に依頼する場合は、そこが手配してくれます。
ステップ2:社名の使用許可を取る(ネームサーチ)希望する社名が既存の会社名や類似商号と重複していないかを確認し、オンラインで使用許可を申請します。候補を3つほど用意しておくとスムーズです。結果は通常1〜2営業日で判明します。
なお、社名の予約が取れたら、一定期間内(一般的に3ヶ月以内)に設立を完了させる必要があります。時間切れに注意してください。
ステップ3:取締役・株主を決めるここで居住取締役の要件が絡みます。マレーシアに主たる居所を持つ取締役が必要なため、まだ現地に住んでいない場合はノミニーディレクター(名義取締役)を使い、EP取得後に自分へ切り替える流れが一般的です。
ステップ4:必要書類を揃えて登記申請定款関連の書類、取締役・株主の身分証明などを提出します。
ステップ5:設立完了・登記番号の取得会社が登記され、Company No.(登記番号)が発行されます。
ステップ6:設立後の各種手続きここで終わりではありません。会社秘書役の任命(30日以内)、法人税の登録、EPF・SOCSOの登録、事業ライセンスの取得、そして銀行口座の開設が続きます。
3. 必要書類
依頼先によって求められるものは変わりますが、一般的には次のようなものが必要になります。
- 取締役・株主全員のパスポートのコピー
- 住所証明(公共料金の請求書など)
- 事業内容の説明
- 資本金・株式構成の情報
- 各種の宣誓書・同意書(取締役就任の承諾など)
実体験:役員を増やすほど時間がかかります
ここは私の最大の反省点です。今回役員を複数名入れたため、役員全員分の書類を揃える必要が生じました。
パスポートや住所証明を人数分、それぞれのスケジュールで集めることになり、1人が遅れると全体が止まります。結果として、書類準備と社内調整に約5ヶ月かかりました。
立ち上げを急ぐなら、まず最小構成で設立し、あとから役員を追加する——今ならこの判断をします。
4. 見落としやすいポイント:法人名と店舗名は別にできる
店舗を構える業種の方に知っておいてほしい点です。
登記されるのは法人名だけなので、屋号(店舗名)を別に使うことは可能です。「株式会社◯◯が、△△という店名で営業する」という形が取れます。
ただしその場合、店舗を置く自治体に対して名称利用のライセンスを別途申請する必要があります。これは営業ライセンスとはまた別の手続きです。私もここは事前に確認して初めて知りました。
5. 費用と期間の目安
費用
| 項目 | 費用のイメージ |
|---|---|
| 法人設立(代行依頼) | RM1万台前半〜 |
| 事業ライセンス(ビジネス/WRT等) | 数千RM〜RM1万台(業種で変動) |
| 会計まわりの初期設定・各種登録 | 各RM1,000〜1,500前後 |
| 払込資本金 | 業種と許認可次第(後述) |
さらに、設立後は月次顧問・居住取締役・会社秘書役・記帳代行などの維持コストが継続的に発生します。
期間
登記そのものは、書類が揃えば早いです。時間がかかるのは、
- 自分側の準備(事業内容の確定、役員の書類集め)
- 設立後の銀行口座開設
(費用と期間の全記録はこちら)私の場合、相談開始から設立完了まで約9ヶ月、そこから銀行口座は半年以上たっても完了していません。「登記待ちで9ヶ月」ではなく、自分側の準備とラスト工程が長いというのが実態です。
6. 最重要:資本金RM1では実質的に足りません
ここが、この記事で一番伝えたいことです。
法律上の最低資本金はRM1ですが、それで会社を作っても実務が回りません。 理由は2つあります。
① EP(就労ビザ)取得には一定の払込資本金が必要自分や駐在員がマレーシアで働くには就労ビザが必要で、その申請には会社の払込資本金が一定額に達していることが前提になります。外資比率や業種によって水準が変わります。
② 業種によっては許認可の要件で大きく上がる特に卸売・小売・貿易系(WRTが絡む業種)は要求水準が高くなります。
私の場合も、まず少額の資本金で設立し、この先の増資を見据えている状況です。設立からEP取得までの全体像はこちらの記事、居住取締役の仕組みはノミニーディレクターの記事にまとめています。
つまり「設立時の資本金=必要な資本金」ではありません。 予算は「設立費用+維持費+将来の増資」で組んでください。
まとめ
- Sdn Bhdは日本の株式会社に相当する法人形態。100%外資での設立が可能
- 法律上の最低資本金はRM1、取締役は最低1名(うち法定数は居住者)
- 会社秘書役は必須(設立後30日以内・資格要件あり)
- 流れは「秘書役決定 → 社名許可 → 役員・株主決定 → 登記 → 設立後手続き」
- 役員を増やすほど書類が増えて遅くなる。急ぐなら最小構成で
- 法人名と店舗名は別にできる(自治体への名称利用ライセンスが必要)
- RM1で作れるが、ビザ・許認可には足りない。増資前提で資金計画を立てること
免責事項:本記事は筆者個人の体験と調査に基づく情報提供であり、法務・税務に関する助言ではありません。会社法の要件・費用相場は変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、公式情報および有資格の専門家に必ずご確認ください。

