マレーシア法人の維持費はいくら?会社秘書役・記帳・決算の費用と選び方

昼間のペトロナスツインタワーとクアラルンプール中心部のビル群 マレーシア法人設立・EP
クアラルンプール中心部(筆者撮影)

マレーシアで法人を設立するとき、多くの人が調べるのは「設立にいくらかかるか」です。私もそうでした。

しかし実際に会社を持ってみると、効いてくるのは設立費用ではありません。 毎月・毎年かかり続ける維持コストです。しかもこれは、売上がゼロでも発生します。

私は2025年にマレーシアで現地法人(Sdn Bhd)を設立し、現地の日系会計コンサルに継続で依頼しています。この記事では、設立後にかかり続ける費用の内訳と、依頼先を選ぶときの判断基準をまとめます。

⚠️ 前提

料金は依頼先・業種・作業量によって大きく変わります。この記事の金額は、私が実際に支払っている費用の「イメージ」をレンジで示したものです(依頼先との守秘の関係で具体額は伏せています)。正確な費用は必ず複数社から見積もりを取ってご判断ください。


結論:会社を持つ=固定費を抱えること

先に全体像です。マレーシア法人を維持するために継続的に必要になるのは、主に次の4つです。

項目発生頻度費用のイメージ
月次顧問(日本語対応の窓口)毎月RM1,500前後〜/月
現地役員(居住取締役)+会社秘書役毎月合わせて月RM1,000台後半〜
記帳代行(Bookkeeping)毎月月RM数千(仕訳量で変動)
決算・監査対応・法人税申告毎年年RM数千〜(項目ごと)

これに加えて、議事録の作成など都度発生する費用もあります。

年額に換算すると、それなりの金額が「何もしなくても」出ていきます。私の実感として、設立の判断で一番重かったのはここでした。事業でこの固定費を回収できる見込みがあるか——それが分かれ目になります。


1. 会社秘書役(カンパニーセクレタリー)は法律で必須

まず押さえるべきは、これは「頼むかどうか選べるサービス」ではないという点です。

マレーシア会社法2016では、法人設立後30日以内に、マレーシア居住者の会社秘書役(Company Secretary)を1名任命する義務があります。

そして重要なのが資格要件です。取締役には特別な資格が求められないのに対し、会社秘書役は法定団体から資格を付与された人物、またはCCM(SSM)にライセンスを登録した専門家でなければなりません。つまり、誰でもなれる役職ではありません。

会社秘書役が担う業務

  • SSM(CCM)への年次申告、登記事項に変更があった際の届出
  • 取締役会・株主総会の準備、議事録の作成・保管
  • 株主・取締役・資本金などの変更手続き

実務では、コーポレートサービスプロバイダーやコンサルに外部委託するのが一般的です。設立を代行会社に頼めば、通常はそのまま秘書役も手配してもらえます。

実体験:秘書役は「実務の要所」で必ず出てくる

秘書役を「登記のための形式的な役職」だと思っていると、後で戸惑います。

私の場合、銀行口座の開設手続きで、理事会決議(Board Resolution)に会社秘書役の承認が必要になりました(詳細は法人口座が半年開かない記録に書いています)。つまり、秘書役と連絡が取れない状態だと銀行手続きすら止まります

選ぶときは料金だけでなく、レスポンスの速さも見たほうがいいというのが実感です。


2. 記帳代行と決算・監査

記帳代行(Bookkeeping)

月々の仕訳を処理する業務です。費用は仕訳の本数に応じて変動するのが一般的で、取引が増えれば料金も上がります。

見積もりを取るときは、「月◯件までいくら」という件数の前提を必ず確認してください。ここを曖昧にすると、事業が伸びたときに想定外の請求になります。

決算・監査対応・法人税申告

マレーシア法人には年次の決算と申告義務があります。会計事務所に依頼する範囲は、おおむね次のように分かれます。

  • 決算書類の作成・監査対応のサポート(監査報酬は通常これとは別)
  • 年次決算申告・登記関連(CCM)
  • 法人税申告書の作成・提出

注意点として、「監査サポート費用」と「監査人への報酬」は別物です。見積書を見るときは、どこまでが含まれているかを確認してください。私も最初、この区別が分かっていませんでした。


3. 見落としがちな費用

議事録作成などの都度費用

株主総会や取締役会の議事録作成は、都度費用が発生することがあります。役員変更、住所変更、増資といった手続きのたびに書類が必要になるため、変更が多い立ち上げ期は都度費用が積み上がりやすいです。

増資に伴う手続き

EP(就労ビザ)取得や許認可の関係で増資が必要になるケースは珍しくありません。私も設立時は少額の資本金で始めましたが、この先の増資を見据えています。増資には手続きが伴い、当然そこにも費用がかかります。

各種登録の初期費用

会計システムの初期設定、法人税登録、EPF・SOCSO(社会保険関連)の登録などは、それぞれに費用が発生します。1件あたりは大きくありませんが、まとめて発生すると効いてきます。


4. 依頼先を選ぶときの5つの判断基準

私が実際に依頼して感じた、料金表だけでは分からない部分です。

1. 料金の前提が明示されているか「記帳代行 月RM◯◯」だけでは判断できません。仕訳件数の上限、超過時の料金、含まれない業務が書かれているかを見てください。

2. 監査報酬が含まれているかどうか前述のとおり別建てが一般的です。総額でいくらになるかを確認しましょう。

3. レスポンスの速さ銀行手続きのように、先方の承認がないと自分が動けない場面が必ずあります。ここが遅い相手だと、実務が止まります。料金より重要かもしれません。

4. 日本語対応の範囲「日本語対応」と書かれていても、窓口だけ日本語で実務は英語というケースもあります。どこまで日本語で完結するかを確認してください。

5. ワンストップかどうか会社秘書役・居住取締役・記帳・決算・ビザ申請が一箇所で完結すると、書類の往復が減ります。逆に分散させると、自分が調整役になって時間を取られます。


5. 高い日系か、安いローカルか

これは避けられない選択です。私の判断を正直に書きます。

現地の日系会計コンサルは、費用は高めです。ただし日本語で流れが整理されており、居住取締役・会社秘書役までまとめて用意してもらえるのが大きい。初めての海外法人設立で「何が分かっていないのかも分からない」状態を回避できました。

現地ローカルのコンサルは費用がぐっと安く済みます。ただし相手が信頼できるかの見極めが必要で、最悪のケースまで想定する覚悟が要ります。この判断を自力でするのはハードルが高いと感じました。

私は初回は「高くても安心を買う」判断をしました。ただし2年目以降、業務が定型化してきたら見直す余地はあると考えています。維持コストは長く続くものなので、慣れてきたタイミングで再見積もりを取るのは合理的です。


まとめ

  • 会社秘書役は法律上必須(設立後30日以内・資格要件あり)。選べるサービスではない
  • 維持コストは月次顧問・居住取締役+秘書役・記帳代行・決算関連の4本柱
  • 売上ゼロでも発生し続ける。年額換算して事業計画に入れること
  • 監査報酬は別建てが一般的。見積もりの範囲を必ず確認
  • 選ぶ基準は料金だけでなく、料金の前提・レスポンスの速さ・ワンストップ性
  • 2年目以降の見直しも選択肢に入れておく

設立にかかった実際の費用と期間はこちらの全記録、居住取締役の仕組みはノミニーディレクターの記事にまとめています。設立費用は一度きりですが、維持コストは会社がある限り続きます。ここを事前に年額で把握しておくかどうかで、資金計画の精度がまったく変わります。


免責事項:本記事は筆者個人の体験と調査に基づく情報提供であり、会計・税務・法務に関する助言ではありません。料金相場・制度要件は変更される場合があります。実際のご判断にあたっては、公式情報および有資格の専門家にご確認ください。

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