【実録】マレーシア会社設立とEP取得の全手順|Sdn Bhd設立まで

マレーシア移住を調べていると、まず出てくるのが MM2H(Malaysia My Second Home)。でも、これは基本的にリタイア層向けで 就労ができない ビザです。「まだ働き盛りで、現地で事業もやりたい」という人にとっては、MM2Hだけだと物足りない、あるいは要件が合わないことがあります。

そこで実際に選ぶ人が増えているのが、現地法人(Sdn Bhd)を設立し、その会社から自分に EP(Employment Pass=就労ビザ)を発給してもらうルートです。

私は日本で事業を営む経営者で、アジア展開と将来の移住の足がかりとして、実際にこのルートでマレーシアに現地法人を設立しました。現時点で「設立」は完了し、これからEP(就労ビザ)取得に進む段階です。この記事では、私自身が体験した設立までの流れ・費用・期間・つまずきと、この先のEP取得までの道筋を、これから同じ道を通る人向けに、進行形の記録としてまとめます。

「もう全部終わった人の後日談」ではなく、今まさに同じ手続きを進めている当事者の記録なので、リアルタイムの温度感が残っているはずです。

⚠️ はじめに(大事な前提)

ビザ・法人・税務の制度は頻繁に改定されます。この記事は「私が手続きした2025年時点の体験」をベースにした個人の記録であり、法務・税務のアドバイスではありません。実際に動く際は、必ず公式情報(マレーシア内務省ESD/登記局SSM)と、資格を持つ専門家・認定エージェントで最新の要件を確認してください。


1. なぜMM2HではなくEP(現地法人)ルートなのか

一番の違いは、ズバリ 「就労できるかどうか」 です。

  • MM2H:長期滞在ビザ。家賃・配当などのパッシブ収入は認められるが、積極的な事業運営・就労には制限がある(就労はできないのが原則)。
  • EP(Employment Pass):マレーシアの会社に雇用される形で発給される就労許可証。現地で事業を運営し、働くことができる。

重要なのは、EPは個人では取得できず、必ず「法人」から申請するという点です。だから「マレーシアで働く/事業をやる」なら、多くの場合まず現地法人(Sdn Bhd)を作り、その会社の常駐取締役や従業員として自分にEPを出す、という順序になります。

私の場合は、日本で営んでいる事業をアジアに広げるための拠点として現地法人が必要だったこと、そして将来的な移住も視野に入れていたことが理由です。MM2Hは事業運営・就労に制限があるため、現地で自分の会社を実際に回すつもりなら、EPルートが実質一択でした。「投資・リタイア目的ならMM2H、事業をやるならEP(現地法人)」——この線引きが、最初の判断軸になると思います。

👉 MM2HとEPのどちらが自分に合うかは、こちらで詳しく比較しています:[MM2HとEP、どっちで移住する?就労と収入の違い →記事#2]


2. 全体の流れ:設立からEP取得までの4ステップ

大きくは、次の4ステップです。

  1. Sdn Bhd(現地法人)を設立する … 会社の器を作る
  2. 払込資本金を必要水準まで用意する … EP申請の前提条件
  3. 事業ライセンス・許認可を取得し、外国人就労ポストを申請する
  4. EP(就労ビザ)を申請・取得する

期間の目安としては、会社設立に数週間〜、銀行口座開設に想像以上の時間がかかり、そこからEP取得まで含めるとトータルで半年〜1年がかりを見ておくのが現実的です。費用は設立からEP取得までの代行を使う場合で数万リンギット規模〜が一つの目安ですが、資本金は別途必要です(後述)。

私の実感を先に言うと、相談開始から設立完了まで約9ヶ月、そこから銀行口座の開設でさらに半年以上。「思ったより時間がかかる」と何度も感じたので、スケジュールは強気に組まないのが吉です(詳細は第7章に)。


3. ステップ①:Sdn Bhd(現地法人)の設立

Sdn Bhd(Sendirian Berhad) は、日本でいう「株式会社(非公開会社)」に相当する法人形態です。特徴は以下の通り。

  • 100%外資での設立が可能(※銀行・保険・通信など一部業種は外資制限や特別ライセンスが必要)
  • 形式上の最低資本金はRM1、取締役1名以上・株主1名以上で設立可能
  • 登記は登記局(SSM)に対して行う

見落としがちな「取締役の居住要件」

設立には、マレーシアに主たる居住地を持つ取締役が最低1名必要です。さらに、会社秘書役(Company Secretary)の選任も必須。移住前の段階では自分がまだ現地に住んでいないことが多いので、実務では現地(マレーシア人)の名義取締役と会社秘書役を立てることになります。

私の場合は、依頼した現地の日系会計コンサルが、この現地役員と会社秘書役をまとめて用意してくれたので、ここは比較的スムーズでした。自分で現地の人を探して頼むのは、信頼できる相手かの見極めが難しいので、この点はコンサルに任せて正解だったと思います。

一方でつまずいたのが役員構成。今回は役員を複数名入れたため、役員全員分の必要書類を揃える必要があり、その準備に想定以上の時間がかかりました。役員を増やすほど書類・確認が増えるので、体制はシンプルにしておくほうが立ち上げは早い、というのが実感です。

もう一つ、店舗を構える業種の人に知っておいてほしいのが「法人名」と「店舗名」は別にできるという点。登記されるのは法人名だけなので、屋号(店舗名)を別に使うことは可能です。ただしその場合、店舗を置く自治体に名称利用のライセンスを別途申請する必要があります(これは営業ライセンスとはまた別物)。

👉 ノミニーディレクターの仕組みと注意点:[ノミニーディレクターとは?必要な理由と注意点 →記事#7]

👉 設立の必要書類・手順の詳細:[Sdn Bhdとは?設立の流れ・必要書類・費用 →記事#3]


4. ステップ②:EP取得に必要な「払込資本金」の壁

ここが最初の関門です。会社は形式上RM1で作れても、EPを申請するには会社の「払込資本金(Paid-up Capital)」が一定額に達している必要があります。

従来の一般的な目安として、外資比率や業種によって求められる水準が変わり、おおむね次のように言われてきました(※あくまで目安)。

会社の類型求められる払込資本金の目安
100%外国資本の会社高め(例:RM50万前後)
ローカルとの合弁企業中程度(例:RM35万前後)
流通・サービス業(WRT該当・外資比率が高い)さらに高め(例:RM100万前後)

⚠️ この金額は頻繁に改定されます。 内務省ESDの告示で見直されるため、上表は「傾向をつかむための目安」として読んでください。申請時点の正確な金額は必ず最新の公式情報で確認を。

実体験:資本金は「業種」で大きく変わる

ここは私が一番注意を促したいポイントです。私の場合、まずは資本金100万円で設立しました。 設立するだけならこの規模で始められます。ところが、業種によっては許認可が必要で、その関係で3,000万円規模の資本金が求められることがあります。特に小売・卸・流通(WRTが絡む業種)は要求水準が上がりやすい

そして重要なのが、EP(就労ビザ)取得の前提としても、一定の払込資本金が必要になる点です。つまり「安く設立 → いざ本格稼働・EP申請の段階で増資が必要」という順序になりがちで、私自身もこの先の増資を見据えているところです。「設立時の資本金=必要資本金」ではないことは、最初に知っておくと資金計画が崩れません。

自分がやろうとしている事業が、どのライセンス・許認可に該当するのかを、設立前に必ず確認してください。ここを見誤ると、資本金の桁が変わります。

👉 最新の資本金要件を業種別に整理:[EP取得の最低資本金はいくら?外資100%/合弁で違う要件【最新】 →記事#4]


5. ステップ③〜④:事業ライセンスと就労ポスト、EP申請

会社ができたら、次は事業に必要なライセンス・許認可(業種によってWRT Approvalなど)を取得し、外国人の就労ポストを申請したうえで、EP本体を申請します。EPの承認までは、申請後おおむね2ヶ月程度が一つの目安です。

なお近年は、ローカル雇用を守る観点から、外国人の就労ビザ申請のハードルは年々上がっていると言われています。会社の実体(オフィス・事業内容・雇用計画など)が問われる場面もあるので、「箱だけ作ればEPが下りる」という感覚では進めないほうが安全です。

📝 正直なところ:ここは私も“これから”です。 現時点で私は設立までを終え、事業ライセンスの整備とEP申請はこれから進める段階。だからこそ本章は、私が調べて理解した「これから通る道筋」として書いています。実際に申請したら、リアルな所要日数や引っかかった点をこの記事に追記していく予定です(進行形の記録として更新します)。

👉 EPの取得条件・カテゴリ・最低給与:[Employment Pass の取得条件・カテゴリ・最低給与 →記事#5]

👉 事業ライセンス(WRT等)の取り方:[会社設立から事業ライセンス取得までの手順 →記事#6]


6. 実務でつまずくところ(銀行口座・オフィス・家族帯同)

制度の要件よりも、実際に手を動かすと詰まるのがこのあたりです。

● 法人・個人の銀行口座開設

正直に言うと、設立そのものより、ここが圧倒的に時間を食いました。 私の場合、口座開設に着手してから半年以上たっても完了しないという状態が続きました。本人確認のために現地(KL)へ何度も足を運ぶ必要があり、しかもアポを取っていても銀行側の対応が予定どおり進まない。時間にはかなりルーズな印象で、「1回行けば終わる」という日本の感覚は完全に捨てたほうがいいです。

手続き面でも独特で、理事会決議に会社秘書役の承認が必要だったり、銀行の署名権者の情報登録(住所や社名の変更時、監査人からの銀行確認状への署名対応などで使う)を求められたりと、会社秘書役とセットで進める場面が多くありました。一方で、実際に署名する書類自体はかなり簡素で、手続きの重さとのギャップに拍子抜けも。なお私が使った銀行(メイバンク)では、申込み自体はオンラインから始められました。

結論として、口座開設は「数ヶ月〜半年がかり」の前提で、渡航スケジュールに大きめの余裕を持たせるのが現実的です。事業開始が口座に依存する場合、ここがボトルネックになります。

👉 詳細:[現地の法人・個人銀行口座開設でつまずいた話 →記事#9]

● オフィス(バーチャル/レンタル)

法人住所はバーチャルオフィスで足りるケースもありますが、EPや事業の実体確認との兼ね合いがあります。私の場合は、現地社員が実際の賃貸オフィスを用意しました。EP申請では会社の実体(実際に事業を行う場所があるか)が見られることを考えると、事業を回すつもりなら実オフィスを構えておくほうが後々スムーズだと考えています。

● 家族帯同(Dependent Pass)

配偶者や子どもを帯同する場合はDependent Passの手続きが必要です。教育移住なら、ここは学校選びと一緒に進めることになります。

👉 手続きの詳細:[家族帯同(Dependent Pass)の手続き →記事#14]

👉 子どもの学校は別記事で徹底解説:[マレーシアのインターナショナルスクール選び →③スクール記事]


7. 私の場合:実際にかかった期間と費用

正直に言うと、現地法人ルートは「設立して終わり」ではなく、設立時の初期費用と、会社を維持するための毎月・毎年のランニングコストの両方がかかります。ここを知らずに始めると資金計画が狂うので、私が現地の日系会計コンサルに実際に支払った費用のイメージを、ざっくりのレンジで共有します(あくまで目安。業種・作業量で変動し、SSTや政府実費は別途)。

● 初期費用(一度きり・ざっくりの目安)

項目費用のイメージメモ
Sdn Bhd 設立RM1万台前半〜標準定款・議事録作成などを含む
各種ライセンス(ビジネス/WRT等)数千RM〜RM1万台(業種で変動)流通・小売系はWRTが絡み高くなりがち
銀行口座開設サポートRM2,000前後/口座開設“代行”ではなく資料準備サポート
会計まわりの初期設定・各種登録各 RM1,000〜1,500前後会計システム/法人税/EPF・SOCSO等
払込資本金業種次第(第4章参照)少額〜数千万円規模まで幅がある
EP(就労ビザ)申請これから(別途費用)現在は設立まで完了。EPは次のステップ

● ランニングコスト(毎月・毎年・ざっくりの目安)

項目費用のイメージメモ
月次顧問(基本契約)RM1,500前後〜/月日本語対応の窓口
現地役員(居住取締役)+会社秘書役合わせて月RM1,000台後半〜居住取締役要件・秘書役要件のため
記帳代行月RM数千(仕訳量で変動)仕訳本数に応じて変動
決算・監査・法人税申告など年RM数千〜(各項目ごと)監査報酬は別途

💡 ここが実体験ならではのポイント:設立費用そのものより、維持コスト(顧問・現地役員・秘書役・記帳・決算)が毎月・毎年ボディブローのように効いてくるのが正直な実感です。「MM2Hより自由度は高いけれど、法人を持つ=固定費が発生し続ける」という覚悟が要ります。事業でその固定費を回収できる見込みがあるか、が判断の分かれ目でした。

● 期間の実際

私の場合の実際のスケジュールはこうでした。

  • 相談開始(2024年11月) … 知人の紹介で日系会計コンサルにコンタクト
  • 対面打ち合わせ・見積(2024年12月) … 価格表を受け取り、方針を固める
  • 社内調整・書類準備(2025年1〜5月) … 必要資料の記入、設立要件(法人名/店舗名の扱いなど)の詰め
  • 法人設立 完了(2025年8月) … 相談開始から約9ヶ月
  • 銀行口座開設(2025年8月〜/長期化) … 着手後、現地に複数回通っても半年以上たっても完了せず

ポイントは、「設立」自体は約9ヶ月で終わったが、その後の銀行口座でさらに数ヶ月〜半年以上かかったこと。会社の器は思ったより早くできても、実際に事業を回せる状態(=口座が使える)になるまでのラスト工程が長い、というのが最大の誤算でした。移住・事業開始のスケジュールは、この“口座待ち”を織り込んで組むことを強くおすすめします。

👉 費用と期間をさらに細かく振り返った記録:法人設立に実際かかった期間と費用の全記録


8. やってよかったこと・つまずいたこと・後悔

実際にやってみて感じた、正直なところをまとめます。

やってよかったこと

  • 現地の日系会計コンサルに依頼したこと。 設立までの流れが日本語で整理されていて分かりやすく、何より現地役員・会社秘書役をまとめて用意してもらえたのが大きい。費用は正直高いですが、初めての海外法人設立で「何が分かっていないのかも分からない」状態を回避できたのは価値がありました。
  • 現地ローカルのコンサルを使えば費用はぐっと安く済みますが、相手が信頼できるかの見極め(最悪、詐欺の可能性まで想定)が必要。ここを自力で判断するのはハードルが高く、初回は「高くても安心を買う」判断で正解だったと思います。

つまずいたこと

  • 役員を複数入れたため、役員全員分の書類が必要になり、準備に時間がかかった。 体制はできるだけシンプルにしておくほうが立ち上げは早いです。
  • 銀行口座の開設が最大の難所。着手から半年以上たっても完了しなかった。 本人確認で現地に何度も行く必要があり、アポを取っても銀行側の進行がルーズで読めない。「設立より口座のほうが長い」という前提で渡航スケジュールを組むべきでした。

これから始める人へ(学び)

  • 現地役員・会社秘書役は必須。ただしコンサル経由で用意できるので、自分で人脈を探す必要はない。
  • 資本金は業種で大きく変わる。許認可の要否を設立前に必ず確認。ここの見誤りが一番コワい。

👉 これから始める人向けに失敗回避をまとめました:[設立でやりがちな失敗・後悔ポイント →記事#10]


9. 節税・オフショア(ラブアン)という選択肢

事業内容によっては、ラブアン(Labuan)法人というオフショアの選択肢もあります。優遇税制が特徴ですが、実体要件や向き・不向きがあるので、安易に「節税できる」と考えるのは禁物です。

正直に言うと、私自身は今回ラブアンは検討しませんでした。現地で実際に事業を回すこと(=マレーシア本土での法人+実オフィス)が目的だったためです。ただ、資産管理やオフショア活用が主目的の人には選択肢になり得るので、「そういう道もある」という程度に知っておくと視野が広がります。

👉 ラブアン法人の実際:[ラブアン(Labuan)法人という選択肢|節税・オフショアの実際 →記事#13]


10. 設立代行は使うべきか、自分でやるべきか

結論から言うと、初めての海外法人設立なら、多少高くてもコンサルに任せることをおすすめします。 特に、現地役員・会社秘書役の用意や、業種ごとの許認可・資本金の判断は、独力だと詰まりやすく、判断ミスのコストが大きいからです。

実際の選択肢は、大きく次の2つでした。

  • 現地の日系会計コンサル(私が選んだ方):費用は高め。ただし日本語で流れが分かりやすく、現地役員・秘書役までワンストップ。初回は安心を買える。
  • 現地ローカルのコンサル:費用は安い。ただし相手の信頼性の見極めが必要で、最悪は詐欺リスクまで想定する覚悟が要る。

「高いが安心の日系」か「安いが自己責任のローカル」か——ここが最初の分かれ道です。予算と、自分の現地対応力・英語力を天秤にかけて選ぶのがいいと思います。

👉 具体的な業者の選び方・比較は別記事にまとめました:[マレーシア法人設立代行サービス徹底比較【使った上での選び方】 →記事#11]


11. まとめ/次に読む記事

マレーシアで働きながら移住したいなら、「Sdn Bhd設立 → 払込資本金の用意 → ライセンス・就労ポスト → EP取得」 という流れが基本形です。制度は動き続けているので、最新情報の確認と、信頼できる専門家・エージェント選びが成功のカギになります。

次に読むと理解が深まる記事:

  • 制度選びで迷っている方 → [MM2HとEP、どっちで移住する? →記事#2]
  • 具体的な設立手順 → [Sdn Bhdとは?設立の流れ・必要書類・費用 →記事#3]
  • リアルな費用感 → 法人設立に実際かかった期間と費用の全記録
  • 業者を選びたい → [法人設立代行サービス徹底比較 →記事#11]

免責事項:本記事は筆者個人の体験に基づく情報提供であり、法務・税務・移民に関する助言ではありません。制度・要件・費用は変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、公式情報および有資格の専門家・認定エージェントに必ずご確認ください。

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