マレーシアでの法人設立を調べていると、必ず出てくるのが「ラブアン(Labuan)」という選択肢です。
「オフショア」「優遇税制」といった言葉とセットで語られるため、節税目的で検討する人が多い領域です。
先に私の立場を書いておくと、私自身はラブアンを選びませんでした。 通常のSdn Bhd(マレーシア本土の法人)を設立し、現地で実際に事業を運営する道を選んでいます。
この記事では、ラブアンとは何か、どういう人に向くのか、そして私が選ばなかった理由を整理します。
⚠️ 重要な前提
税制は頻繁に改定され、国際的な規制も動いています。この記事は2026年7月時点の一般的な整理であり、税務上の助言ではありません。ラブアンの活用は日本の税制(タックスヘイブン対策税制など)とも関わるため、必ず日本とマレーシア双方の税理士にご相談ください。 この記事を根拠に判断しないでください。
1. ラブアンとは
ラブアンはマレーシア連邦直轄領の島で、国際金融センター(Labuan International Business and Financial Centre)として位置づけられている地域です。
マレーシア国内でありながら、本土とは異なる税制・規制が適用されるのが特徴です。金融、持株会社、貿易、資産管理などを目的とした法人設立先として知られています。
つまり「マレーシアに会社を作る」といっても、本土のSdn Bhdとラブアン法人はまったく別物だと理解する必要があります。
2. 何が違うのか
大まかな違いはこう整理できます。
| 本土のSdn Bhd | ラブアン法人 | |
|---|---|---|
| 主な用途 | 現地での実際の事業運営 | 国際取引、持株、資産管理など |
| 税制 | マレーシアの通常法人税 | 優遇税制が適用される場合がある |
| 現地での事業 | 可能 | マレーシア本土での事業には制限がある |
| 実体要件 | 通常の会社運営 | 一定の実体要件(オフィス・従業員等)が求められる |
| 就労ビザ | EPの取得が可能 | 制度が異なる |
最も重要なのは「マレーシア本土で商売をする器ではない」という点です。ラブアン法人は国際的な取引を想定した仕組みであり、本土での小売や店舗運営を行うための形態ではありません。
3. 「節税できる」という理解は危険です
ここは慎重に書きます。
ラブアンが注目されるのは優遇税制が理由ですが、近年、国際的な監視は強まる方向にあります。実体のないペーパーカンパニーに対する規制は世界的に厳しくなっており、「登記だけして税率を下げる」という使い方は成立しにくくなっています。
具体的に注意すべき点を挙げます。
① 実体要件(サブスタンス)優遇税制の適用には、現地のオフィスや従業員といった実体が求められる場合があります。要件を満たさなければ、優遇が受けられない可能性があります。
② 日本側の税制日本の居住者や日本法人が絡む場合、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の対象になる可能性があります。マレーシア側で税率が低くても、日本側で課税されるという構図が起こり得ます。
③ 制度は変わる税制優遇は政策判断で変更されます。設立時の条件が続く保証はありません。
「節税できる」と単純化した情報だけで判断するのは、率直に言って危険です。
4. どういう人に向くのか
一般的に、ラブアンが検討対象になるのは次のようなケースです。
- 国際取引が中心で、マレーシア本土での商売を想定していない
- 持株会社として使いたい
- 資産管理が主目的
- 実体要件を満たせる体制を作れる
- 日本側の税務も含めて、専門家と設計できる
逆に、現地で実際に店舗や事業を運営したい人には向きません。そこは本土のSdn Bhdの領域です(Sdn Bhdとは?もご覧ください)。
5. 私がラブアンを選ばなかった理由
シンプルです。目的が違ったからです。
私の目的は、日本で営んでいる事業をアジアに広げるための拠点をつくることでした。つまり、
- マレーシア本土で実際に事業を運営する
- 実オフィスを構える(現地社員が賃貸オフィスを用意しました)
- 自分がEP(就労ビザ)を取得して経営に関わる
- 将来的に家族で移住する
この条件では、ラブアンは選択肢に入りません(設立の実録はこちらの記事にまとめています)。本土での事業運営と就労が前提だからです。
もう一つの理由は、税務の複雑さを抱えたくなかったことです。日本の事業を持ったまま海外法人を作る時点で、日本側の申告にも影響が出ます。そこにオフショアの論点まで加わると、判断すべきことが増えすぎると考えました。
初めての海外法人設立で、シンプルな構造にしておくというのは、それ自体が価値のある判断だと思っています。
6. 検討するなら、この順序で
もしラブアンを検討するなら、次の順序をおすすめします。
- 目的を明確にする(節税が目的なのか、事業の器が必要なのか)
- 本土のSdn Bhdでは実現できないのかを確認する
- 日本側の税務への影響を、日本の税理士に確認する
- 実体要件を満たせる体制を作れるか検討する
- マレーシア側の専門家と、現行制度を確認する
特に3を飛ばさないでください。 マレーシア側の話だけで判断すると、日本側で想定外の課税が生じる可能性があります。
まとめ
- ラブアンはマレーシアの国際金融センターで、本土とは税制・規制が異なる
- 本土での事業運営を目的とする器ではない
- 優遇税制はあるが、実体要件が求められ、日本側の税制も絡む
- 「節税できる」と単純化した理解は危険。制度は変わる
- 向くのは国際取引・持株・資産管理が主目的のケース
- 私は本土で事業を運営し、EPを取得して移住することが目的だったため選ばなかった
繰り返しになりますが、ここは必ず日本とマレーシア双方の税理士に相談してください。 判断を誤ると、税務上のリスクを長期にわたって抱えることになります。
免責事項:本記事は筆者個人の調査に基づく情報提供であり、税務・法務に関する助言ではありません。税制・要件は頻繁に変更されます。実際のご判断にあたっては、必ず有資格の税理士・専門家にご相談ください。

