マレーシアEPの払込資本金はいくら?外資100%・合弁・WRT別の目安【2026年最新】

ライトアップされた夜のペトロナスツインタワーとクアラルンプールの夜景(マレーシア) マレーシア法人設立・EP
夜のクアラルンプール中心部(筆者撮影)

マレーシアで現地法人を作るとき、一番資金計画を狂わせるのが「資本金」です。

会社法上の最低資本金はRM1。実際にその金額で会社は作れます。ところが、EP(就労ビザ)を取ろうとした瞬間に、まったく別の金額が要求されます

私自身、まず少額の資本金で設立し、この先の増資を見据えている状況です。「設立時の資本金=必要な資本金」ではない——これを知らずに始めると、走り出してから資金計画が崩れます。

この記事では、EP取得と許認可に必要な払込資本金の水準を、業種・外資比率別に整理します。

⚠️ 最重要の前提

資本金要件は頻繁に改定されます。 さらに2026年6月1日からEP制度自体が大きく変更されています(後述)。この記事は2026年7月時点で調べた内容ですが、申請時点の正確な要件は必ず内務省ESD/MDECの公式情報と認定エージェントでご確認ください。この記事の数字を根拠に申請しないでください。


1. 結論:資本金は「3段階」で考える

混乱しやすいので、先に整理します。マレーシアの資本金には3つの異なる水準があります。

段階いくら必要か何のため
① 法律上の最低額RM1会社を登記するだけ
② EP取得の水準外資比率・業種で変動就労ビザを取るため
③ 許認可(WRT等)の水準業種で変動・最も高額事業を合法に営むため

多くの人が①だけを見て「安く作れる」と判断し、②③で躓きます。 私もこの構造を理解するのに時間がかかりました。


2. EP(就労ビザ)取得に必要な払込資本金

EPを申請するには、会社の払込資本金(Paid-up Capital)が一定額に達している必要があります。従来から目安とされてきた水準は、外資比率によって次のように分かれます

会社の類型払込資本金の目安
マレーシア100%資本の会社RM25万
合弁会社(ローカルとの共同出資)RM35万
外国100%資本の会社RM50万
外資資本の流通・サービス業・飲食業RM100万

日本から進出する場合、多くは「外国100%資本」=RM50万が基準になります。実務的にも、EP取得を見据えてRM50万以上に設定する企業が一般的とされています。

なお、日系の現地法人ではRM10万〜RM100万の範囲で資本金を設定するケースが多いようですが、資本金が少なすぎるとEP審査で不利になるという点は押さえておくべきです。金額を満たしていれば自動的に通るわけではなく、審査上の評価要素でもあります。


3. 許認可(WRT/USS)の水準がさらに高い

ここが一番の落とし穴です。業種によっては、EPの水準よりさらに高い資本金が必要になります。

外資比率が51%以上の企業は、ほぼ次のいずれかのライセンス申請対象になります。

  • WRT(卸売・小売・貿易)ライセンス … 物販・貿易系のビジネス
  • USS(非規制サービス業)ライセンス … サービス業

そしていずれの場合も、最低RM100万の資本金が必要とされています。

つまり、流通・小売・貿易系で外資中心の会社を作るなら、RM100万規模を前提に資金計画を立てる必要があります。EP用のRM50万を用意しても、許認可で足りないという事態が起こり得ます。

参考として、製造業では「フルタイム従業員75名以上、または株主資本RM250万以上」がMIDAライセンスの基準となるケースもあります。業種によって見るべき数字がまったく違うわけです。

実体験:業種の確定が最優先

私のケースは流通・販売系(WRTが絡む業種)でした。振り返ると、設立準備で一番時間を使ったのは「事業内容と業種の確定」でした。

理由は明確で、業種が決まらないと必要な許認可が決まらず、許認可が決まらないと必要な資本金も決まらないからです。順序としては、

  1. 事業内容・業種を確定する
  2. 必要な許認可が決まる
  3. 必要な資本金が決まる
  4. 資金計画が立つ

ここを飛ばして「まず会社を作ろう」と進めると、後から桁が変わります。


4. 【2026年6月改定】EP制度そのものが変わりました

資本金の話に加えて、EP制度自体の大きな変更が入っています。ここは必ず確認してください。

2026年6月1日から、外国人雇用制度(Expatriate Employment Policy)の改定により、EPの条件が大きく変わることが公表されています。主な内容は次のとおりです。

  • 最低給与基準の引き上げ
  • カテゴリー区分の見直し(技術職・事務職・若手ポジションが対象のカテゴリー3は、RM5,000〜RM9,999の給与基準が前提)
  • サクセッションプランの導入(外国人材からローカル人材への知識移転・育成を求めるもの)

つまり単なる給与額の変更ではなく、「外国人雇用の考え方そのものの転換」と評されています。背景にはローカル人材の保護があり、外国人の就労ビザのハードルは全体として上がる方向です。

資本金を満たすだけでは足りません。 給与水準、ポジションの妥当性、会社の実体(オフィス・事業内容・雇用計画)まで見られる前提で準備する必要があります。


5. 「安く設立→あとで増資」の落とし穴

私が実際に選んだのは、まず少額の資本金で設立し、必要になった段階で増資するというルートです。この方法には利点と注意点があります。

利点

  • 初期の資金拘束が小さい
  • 事業内容が固まる前に大金を入れなくて済む

注意点

  • 増資には手続きと費用が発生する(会社秘書役の関与、書類作成など)
  • EP申請や許認可のタイミングでまとまった資金が必要になる
  • 増資が間に合わないと、ビザ申請や事業開始が遅れる

つまり、「あとで増資」は資金を先送りできるだけで、必要総額が減るわけではありません。 増資のタイミングと必要額を、最初からスケジュールに入れておくべきでした。


6. これから設立する人へのチェックリスト

  • 事業内容と業種を最初に確定する(すべての金額がここから決まる)
  • 自社がWRT/USSの対象になるかを確認する(外資51%以上はほぼ対象)
  • EP用の水準と許認可用の水準の、高いほうを基準に資金計画を立てる
  • 2026年6月のEP制度改定の内容を確認する(給与基準・カテゴリー・サクセッションプラン)
  • 増資前提で始めるなら、増資の時期と手続き費用も計画に入れる
  • 最終的な金額は必ず認定エージェント・専門家に確認する(この記事の数字を根拠にしない)

まとめ

  • 資本金は①法律上RM1/②EP取得の水準/③許認可の水準の3段階で考える
  • EP取得の目安は外国100%資本でRM50万、外資の流通・サービス・飲食業でRM100万
  • WRT/USSライセンスは最低RM100万。外資51%以上はほぼ対象になる
  • 製造業は従業員75名以上または株主資本RM250万以上が基準になるケースも
  • 2026年6月1日からEP制度が大幅改定。最低給与引き上げ・カテゴリー見直し・サクセッションプラン導入
  • 「設立時の資本金=必要資本金」ではない。増資前提で資金計画を組むこと

設立の全体像は【実録】マレーシア会社設立とEP取得の全手順、Sdn Bhdの基本はこちらの記事、MM2Hとの比較はMM2HとEPどっち?にまとめています。制度が動き続けている領域です。この記事も状況が変わり次第、更新していきます。


免責事項:本記事は筆者個人の体験と調査に基づく情報提供であり、法務・税務・移民手続きに関する助言ではありません。金額・要件は頻繁に変更されます。実際の申請にあたっては、必ず公式情報(内務省ESD/MDEC/SSM)および有資格の専門家・認定エージェントにご確認ください。

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