マレーシアで現地法人(Sdn Bhd)を設立するとき、多くの人が「設立さえ終われば事業を始められる」と考えます。私もそう思っていました。
結果として、これが一番の誤算でした。
会社の登記は2025年8月に完了しました。その直後から法人口座の開設に着手し、現地(クアラルンプール)へ何度も足を運びました。それでも半年以上たって、まだ開設が完了していません。
この記事では、私が実際に経験した法人口座開設の流れと、どこで、なぜ詰まったのかを記録します。「必要書類の一覧」はネットで見つかりますが、「なぜ終わらないのか」を書いたものはほとんど見つからなかったので、同じ道を通る人の役に立つはずです。
⚠️ 前提
銀行・支店・担当者・時期・業種によって進み方は大きく変わります。この記事は私個人のケース(Maybankで申込、役員複数名、流通・販売系の業種)の記録です。要件は変更されるため、実際の開設にあたっては銀行および依頼先の専門家に直接ご確認ください。
結論:設立より、口座のほうが長い
先に結論をまとめます。
- 会社の登記そのものは、書類が揃えば早い
- しかし法人口座は、開設まで数ヶ月〜半年以上かかることがある
- そして口座がないと、入金も支払いもできない=事業は動かせない
つまり事業開始のスケジュールは「設立完了」ではなく、「口座開設完了」を起点に引く必要があります。ここを見誤ると、私のように「会社はあるのに何も始められない」期間が発生します。
1. 実際の経緯
| 時期 | 起きたこと |
|---|---|
| 2025年8月 | 現地法人(Sdn Bhd)の設立が完了 |
| 2025年8月末 | 法人口座の開設に着手。Maybankにオンラインから申込 |
| 2025年9月 | 理事会決議への会社秘書役の承認、署名権者の情報登録など、書類の往復が続く |
| 2025年11月 | 手続きのためクアラルンプールへ渡航。それでも完了せず |
| 2026年に入っても | まだ開設が完了していない |
着手から半年以上。この間、渡航は複数回に及びました。
2. 意外だったこと:申込はオンラインでできる
まず、良い意味で意外だった点から。
私が使ったMaybankでは、口座開設の申込み自体はオンラインから始められました。「すべて現地の窓口で紙の書類を書く」という想像とは違い、入口はデジタルです。
さらに拍子抜けしたのが、実際に署名する書類そのものはかなり簡素だったこと。分厚い契約書の束をイメージしていたのですが、実物はシンプルでした。
では、なぜ半年もかかったのか。 問題は書類の量ではなく、そこに至るまでのプロセスにありました。
3. 詰まった3つの理由
理由①:本人確認のために現地へ行く必要がある
法人口座の開設では署名権者本人の確認が求められます。これはオンラインで完結せず、現地に行く必要がありました。
日本から通う場合、これは単なる「1回の出張」では済みません。1回で終わらなければ、次の渡航を調整して、また飛ぶことになります。私の場合、複数回の渡航が必要になりました。
渡航費と日程調整が、そのまま隠れコストになります。
理由②:銀行のペースが読めない
これが精神的に一番きつい部分でした。
アポイントを取っていても、銀行側の対応が予定どおりに進まないことがありました。時間に対する感覚が日本とはかなり違う印象で、「予約した時間に行けば手続きが進む」という前提が通用しません。
日本の銀行のように「書類を揃えて窓口へ行けば、その日に完了する」という期待は、いったん捨てたほうが精神的に楽です。
理由③:会社秘書役とセットで進める書類が多い
実務的にはここが一番厄介でした。手続きの中では、
- 理事会決議(Board Resolution)に会社秘書役の承認が必要
- 銀行の署名権者の情報登録(住所や社名の変更時、監査人からの銀行確認状への署名対応などで使うもの)
といった、会社秘書役が絡む書類が出てきます。つまり銀行・自分・会社秘書役・コンサルの4者間で書類が往復するため、どこか1箇所が止まると全体が止まります。
私は役員を複数名入れていたため、署名や書類が人数分必要になり、これも進行を遅くしました。
4. 口座が開かないと、何が止まるのか
「口座がまだ」という状態は、単なる手続きの遅れではありません。事業のすべてが止まります。
- 売上を受け取れない
- 仕入れや経費を支払えない
- 従業員に給与を払えない
- 資本金の入金・増資など、次のステップに進めない
会社の登記が終わっていても、お金の出入り口がないと事業は動かない。これが実感です。
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口座が開くまでの資金移動をどうするか
日本の銀行から海外送金すると、送金手数料に加えて為替レートに上乗せされるコストが発生します。金額が大きいほど、この差は無視できません。私自身もマレーシアとの資金移動でこの点を検討しました。
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5. これから開設する人へ:5つの対策
私の半年から逆算した、実践的な対策です。
1. スケジュールは「設立+数ヶ月〜半年」で引く設立完了を事業開始日にしないこと。口座開設に大きめの余裕を持たせてください。
2. 渡航を前提に、予算と日程を確保する1回では終わらない可能性を織り込みます。渡航費は「隠れコスト」として最初から予算に入れておくべきでした。
3. 役員構成はできるだけシンプルに署名・書類が人数分必要になります。立ち上げを急ぐなら最小構成で始め、あとから追加するほうが早いです。
4. 会社秘書役とすぐ連絡が取れる体制にする理事会決議の承認など、秘書役が絡む場面が必ず出ます。往復のロスを減らせます。
5. 「進んでいるか」を自分から確認する待っていても進まないことがあります。定期的に状況を確認する前提でいたほうが健全です。
6. それでも法人口座は必要
ここまで書くと「大変すぎる」と感じるかもしれません。ただ、現地で事業を運営するなら法人口座は避けて通れません。
重要なのは、この工程を軽く見積もらないことです。私は「設立が終われば動き出せる」と考えていたために、事業の立ち上がりが大きくずれました。最初から半年かかると分かっていれば、その前提で他の準備を進められたはずです。
これから設立する方は、設立と口座開設の準備を並行できないか、依頼先に相談してみてください。私自身、この点をもっと早く詰めておくべきだったと思っています。
まとめ
- Maybankでは申込みはオンラインから可能。署名する書類自体は簡素
- ただし本人確認で現地に複数回行く必要があり、時間がかかる
- 銀行のペースは読めない。アポがあっても予定どおり進まないことがある
- 理事会決議への秘書役承認・署名権者登録など関係者が多く、往復が発生する
- 結果として、私の場合は着手から半年以上たっても未完了
- 事業開始日は「口座開設完了」を起点に引くこと
進捗があれば、この記事に追記していきます。設立全体の流れは【実録】マレーシア会社設立とEP取得の全手順、費用と期間の全記録はこちらの記事にまとめています。
免責事項:本記事は筆者個人の体験に基づく情報提供であり、金融・法務・税務に関する助言ではありません。手続き・要件・所要期間は銀行や時期によって異なり、変更される場合があります。実際の口座開設にあたっては、各金融機関および有資格の専門家に必ずご確認ください。

